【商品開発】光が楽しめる傘の制作/光が透ける生地の開発(フジヤマテキスタイルプロジェクト2020)

2022.08.26

フジヤマテキスタイルプロジェクト2020にて

舟久保織物と東京造形大学テキスタイル専攻の学生が

商品開発を行なった際のレポートです。


フジヤマテキスタイルプロジェクトとは・・・

2009年からスタートした東京造形大学テキスタイルデザイン専攻

富士吉田〜西桂織物産地との産学提携プロジェクト。

学生がインターンシップに近い形で織物メーカーと関わり、

一緒に商品開発を行います。

このプロジェクトを通してこれまで数々のファクトリーブランドが

生まれてきました。


2020年度のフジヤマテキスタイルプロジェクトは

新型コロナウイルス感染拡大の影響で

実施が不可能かと思われましたが、

 

学生と職人が直接会わないことを約束に

2020度の実施が決まりました。

 

異例のオンラインものづくりです。

 

デザインのやりとりも

イメージの共有も

全て会うことなく行わなければなりません。

 

もちろん発会式も

オンライン開催になりました。

未だにアナログ機器が大活躍している繊維業界

そんな業界の重鎮たちが、慣れない中

インターネットの画面上で顔合わせをするという

なかなか見られない光景からプロジェクトはスタートしました。

 

未だ体験したことのない新しい試みに戸惑いながらも

制作する商品のテーマが決定し、商品の開発は始まりました。


パートナーになった学生さんが提示してくれたテーマは

「光が楽しめる傘」

 

コロナ禍の長い自粛期間中に

ふとベランダから外に出た時、光が心地よかったという体験から

インスピレーションが湧いたと話してくれました。

 

テーマからイメージを膨らませていき、

「生地が透けて光が差し込んでくる生地」

「こもれびのようなイメージの生地」

を目指すことになりました。

 


試作① 糸を溶かして透けさせる

デザインが上がったらそれを実現するのが職人の仕事です。

 

光が透ける生地を実現するべく試作に取り掛かりました。

まずはオパール加工という「糸を溶かす」手法を試しました。

 

麻や綿などの植物繊維は専用の薬剤をつけて熱を加えることで

溶かすことができます。

ポリエステルなどの合成繊維は薬剤に強いため溶けずに残ります。

↑(加熱する温度を変えた複数の試験を実施)

 

(↑タテ糸がポリエステル、ヨコ糸が麻。ヨコ糸の麻だけが溶けている。)

 

自社でこの加工を行うには手間と時間がかかりすぎるため

生産工程に組み込むことは難しいと判断しました。

うまく溶かすことができず、ところどころ焦げっぽくなってしまうことも・・・。

 

加工会社に頼めば綺麗に仕上がるのかもしれませんが

富士吉田市周辺にオパール加工を得意とする加工所が無いこともあり

別の方法を試すことにしました。


試作②糸を寄せる

織っている段階で「糸を寄せる」方法に切り替えました。

ジャカードという糸を一本一本コントロールして柄を出す装置を使うことで

複雑なパターンを織ることが可能です。

 

透けさせる部分には「擬紗織(ぎしゃおり)」という織組織を活用しました。

 

糸を溶かすと糸の密度が変わってしまいますが、

「擬紗織」なら糸の本数はそのままに生地を作ることができます。

↑(メッシュのような見た目 糸が寄って3本で1セットになっている)

↑(透けさせる部分としっかり織る部分を分ける)

光が透ける生地ができました。

試作なので織機にかかっていたタテ糸をそのまま活用しました。

白い糸で作ればもっと透けるかもしれません。

 

ただ、ここまで透けさせると傘としての機能を果たせないので

生地の一部のみを透けさせるデザインに変更することで決定しました。


透ける生地が形にできたので

ほぐし織」用の型を用意し、染め、製織します。

↑(ほぐし織の型)

↑(茶色く見えますが、高圧釜に入れて色を定着させると緑と黄色に変化します。)

 

ジャカードで柄を出しながら織っていき、

防水撥水UVカット加工を施し、

 

縫製して傘に仕上げたら完成です。

 

光が当たると葉っぱの模様が浮き出てきます。

デザインも爽やかで外に出かけたくなるような

傘に仕上がったのではないでしょうか。


2020年度のフジヤマテキスタイルプロジェクトの成果は

山梨県のビヨンドコロナプロジェクトの一環として動画が作られました。

↑山梨県ビヨンドコロナプロジェクトについてはこちらから↑


いかがだったでしょうか。

学生の新鮮な発想と

職人の技術が組み合わさることで

ユニークな商品が生まれます。

 

毎年、8月ごろからフジヤマテキスタイルプロジェクトはスタートします。

10月に富士吉田市で開催されるハタオリマチフェスティバルでは

「イマココ展」というプロジェクトの進捗状況が見れる展示が用意されます。

プロジェクトの最終的な成果は年明けの展示会で発表されるので

ぜひチェックしてみてください。


オーダーメイド生地の制作、OEM生産を 承っております。

今回ご紹介した擬紗織も提案できます。

ユニークなアイデアをお待ちしておりますので

ぜひ、ご依頼いただければと思います。

防水撥水生地をはじめ、その他ご要望に合わせた生地を

制作することも可能ですのでまずはお気軽にご連絡ください。

関連記事

Related Posts

カテゴリー一覧

Category