ほぐし織

「ほぐし織」は水彩画のような色柄の柔らかさと温かみが魅力です。
色ごとに制作される「型」によって、花や木、幾何学模様などの様々な柄を自由に、
カラフルに、そして大胆に表現することができます。

職人の手作業で丁寧に行われる「染め」は、絵の具のように
ナチュラルな色の重なりを生み出します。
「織り」の工程では、「絣」と呼ばれる柄の輪郭がズレる現象が起こり、
立体感が生まれ、味わい深い織物生地に仕上がります。

「ほぐし織」は、優れた「型作り職人」「染め職人」「織り職人」
が揃わないと成立しない高度で貴重な日本有数の織物です。

歴史

history

 豪華絢爛な建造物や衣装が生まれた18世紀のフランス・リヨンで「ほぐし織」の技法は確立しました。「ロココ様式」と呼ばれる繊細で優美な美術様式の中で、マリーアントワネット王妃や、ポンパドゥール夫人などのヨーロッパのファッションリーダーたちは、「ほぐし織」の技法で作られたドレスを愛用していました。
日本では明治時代にこの技法が確立し、「銘仙着物」という女性向けのおしゃれ着に使用されました。大正時代には、「ほぐし織」で作られたハイカラな衣装が一斉を風靡し、「大正ロマン」と呼ばれるファッションの一時代を築き上げ、時代を彩りました。舟久保織物の工場がある富士山麓では大正11年頃から作られ始め、高級傘生地の生産という形で定着しました。
手間がかかり、高度な織物であるため、大量生産・大量消費の時代に移行してからその数を減らし、現在国内で数えるほどしか製造工場が残っていません。私たちは、その数少ない生産現場のひとつとして、伝統を守りつつ、「ほぐし織」が持つさらなる可能性を追求し、レトロなものから、モダンなものまで、多種多様な生地を作っていきます。

技法

technic

ほぐし織は、糸の一本一本に柄をつけてから織り上げる「先染め織物」です。まず、整経した経糸に粗く緯糸を織り込む「仮織」をします。染めた時に糸がバラバラにならないようにする「ほぐし織」特有の工程です。
平台に糸を綺麗に揃え、糸の上に「型」を乗せます。富士山の湧水、糊、染め粉を調合した染料を用意し、丸刷毛を使って型の上から一本一本の糸に色をつけていきます。染め上げた糸を、高圧釜に入れて色を糸に定着させた後、織機にセットして「本織」をします。織りながら、糊で固まった糸を手で「ほぐし」ながら「仮織」の緯糸を抜きます。この工程が「ほぐし織」の語源になっています。経糸が微妙にズレて水彩画のようなぼかしが生まれ、温かみのある生地に仕上がります。

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